前回、アメリカの大学院の利点として
1)博士課程はそもそも給料が出る
2)英語が身に着く
3)アメリカの大学院は日本と比較して遥かに授業が充実している
4)アメリカの大学院は「研究と同じぐらい教育も大切」という文化がある
5)TA をやることによって指導経験が身に着く
6)アメリカの教授の方が日本より遥かに優秀(あくまで一般論です)
7)アメリカの方が学生のモチベーションやプライドが遥かに高い
8)なによりかけがえのない経験になる
を挙げたが、さらに
9)アメリカの学生の方が遥かに優秀(これも一般論)
10)キャンパスがとーーっても綺麗
を加えておきます!
今回は、学生の能力について日米の大学院の比較を書いてみたい。
これに関しては(珍しく)断言できるが、博士課程の学生に限ればアメリカの大学院生の方が遥かに優秀だ!
まあそれは当然だ。
そもそも、日本の大部分の大学院生はお金を払わなくてはならないわけで、対してアメリカでは授業料免除どころか給料(stipend)まで出るのだ。
どちらの方に優秀な学生が多く集まるかは、ルベーグの収束定理を用いるまでもなく自明だ。
・・・ただし注意しておくと、学生のトップ20パーセントぐらいは日本でもアメリカでも大差ない、と僕は思っている。
(この「トップ20パーセント」は「東大京大(またはそれに準じるレベルの大学院)の中のトップ20パーセント」という意味だ。)
日本にも出来る学生はたくさんいるわけで、例えば東大の大学院の上位層の大学院生は相当に優秀だと思う。
僕の卒業した数理科学研究科でもどんどん論文を出しているような先輩もいたし、他の学科でも、例えば僕の同輩でバイオ系の研究をしている K などは、この前論文がネイチャーに載ったらしい!
K 程ではなくても、ある程度優秀であれば、全額とはいかなくてもある程度は学費も免除になるし、それに加えて返済不要の奨学金がもらえたりする場合も(少ないながら)ある。
だから、本当に優秀であれば、特にアメリカに留学する必要はないとも言える。
まあとにかく、優秀な学生は日本にもたくさんいる。
・・・なのだが、決定的に違うのが下位80パーセントだ。
どういうことか説明する前に、日本の大学院の現状を書こう。
まず、日本の大学院は圧倒的に入り易いのだ!
定員割れ(または定員割れ寸前)の大学院も少なくないというし、内定がとれなかったときのために、滑り止めで大学院を受けるような学生もいる。
そして、これは東大ですら例外ではない。
流石に東大は定員割れはしていないとは思うが、でも入るのは決して難しくない。
(もちろん例外もあって、例えば僕の卒業した数理科学研究科は入学するのはそれなりに難しい。)
しかも、日本の修士や博士は、就職の際大して有利にならない。
というより、博士卒の場合は(かなり)不利になるとさえ言われている。
博士卒ともなると、就職する際の年齢もかなり高くなり、企業側としてもとても「使いづらい」のだ。
よって、結果として、日本の大学院にはモラトリアムで入ってくる学生が大量にいる、のだ!
モラトリアムで、とまでは言わなくても、例えば「数学しかできないから」みたいな理由で大学院に来る人は非常に多いと思う。
いい年になって親の脛をかじらなければならないのは良い気がするはずもないし、当然、大学院生であることにプライドなど持てるはずもない。
(これも僕の全く個人的な感想なのだが、実際在籍してみて、みな全体的に非常に後ろ向きでかつガッツがないように映った。)
・・・さて、アメリカの大学院はというと、まさに対極にある。
入るのは相当に難しいし、しかも入学しても、ぼーっとしていれば即退学になる!
「成績は一定以上をキープしなければ退学」
とどの大学院も明記しているし、かなり難しい試験もいくつもパスしなけらばならないし、英語がいつまでたっても出来なかったり TA の仕事で学生の評価が悪いと給料ももらえなくなる。
だからモラトリアムで入ってくる学生など皆無だし、もしいたとしても一年ももたないだろう。
さらに、就職に関しても Ph.D. ホルダーは有利だ。
アメリカでは生涯賃金は、学部卒<<修士卒<<博士卒、になっているそうだ!
(<<は「非常に大きい」を表す記号。)
だから、アメリカでは一旦就職してかなり経ったあとに Ph.D. に来る学生も珍しくない。
30代どころか、40代や50代の学生だっているらしい。
だから、もし理系の学部生の方がこれを読んでいて、大学院に行きたいと考えているなら、絶対に絶対にアメリカを薦めます!
Ph.D. にいきなり入学するのは無理でまず修士課程を目指すにしても、それでもアメリカの修士の方がいいと僕は思います。
随分書いてしまった。
TA の仕事については書きたいことが山ほどあるのだが、まあそれはまたの機会にします。