Ph.D.

数学科と他学科の違い

さて、今日は珍しく数学について書きます!

一口に Ph.D. 留学と言っても、数学科(&理論物理)とそれ以外では共通点は本当に少なく、一般の Ph.D. 留学の書籍(ほとんどないですが)やブログは時に非常に misleading になり得るので!


さて、まず他学科はというと、先生が企業や国からお金を引っ張って来て、そのお金で大学院生を雇い研究を遂行する、という形になっている。

先生一人で実験を全部行うなんてことは絶対に不可能だから、学生を雇うことは必要不可欠だ。


そう、だから、他学科の学生の指導教官選びは「就活」そのものなのだ!

たくさん面白いプロジェクトを持っている先生に、自分を売り込み能力をアピールして雇ってもらう、というシステムになっているのだ。

だから、先生が自分の学生を気にかけ色々とアドバイスをくれたりすることは、ある意味では「自分のため」でもあるわけなのだ。先生はいわば社長で大学院生は従業員なわけで、従業員が優秀でなければその「会社」は潰れてしまうから!


・・・さて、では数学科はどうか?

実は僕は、こっちに来てから、先生が皆とても親切で、「先生の研究についてお話を伺いたいのですが」のようなメールに必ず返信をくれ時間を割いてくれたりすることや、「先生の学生になれますか?」のような質問に対しどの先生もとても enthusiastic であることに非常に驚いたのだ。

(日本の大学院ではこの対極の印象を受けたからだ。「学生を持つのは自分の時間が削られるだけだ」とどの先生も思っているように僕には見えた。)


だから、親しい先輩に、一度

「何故どの先生もこんなに優しいんですか?学生を取ることで先生にもメリットがあるんですか」

と聞いたことがあった。

彼女は大笑いして「メリットは nothing だ」と言い、

「もし仮に Yuki が先生で、学生が誰も自分の研究に興味がなかったらどう思う?」

と僕に聞いた。


・・・そう、つまりはそういうことなのだ!


ここ UC Irvine の先生が親切で、自分の研究室に興味のある学生に対して時間を割いてくれたりすることは、それは「その先生が良い人だから」であって「そうすることで自分が楽しいから」なのだ!

自分の学生が増えても給料が増えるわけでもなく、自分の研究に学生が必要なわけでも全くない。

「経験」というものがほぼ全ての数学という学問では、天才的に優秀でもない限り「学生が先生より優秀」ということはあり得ない。


そういえば、僕のその質問がとっても面白かったらしい先輩は Dynamical System の研究室のパーティーで、

「Yuki がこんなことを言っていたのだけど Anton はどう思う?」

と先生に聞いた。


先生は面白そうに微笑んだ後に

「自分の学生が多いのは自分のグループがしっかり大きくなっているようで楽しい。自分の学生を持つことは kids を持つことと同じだ」

のような趣旨のことを言われた。

ぼくは笑って

“What? We are kids to you?”

と冗談めかして言ったら

“But the same analogy applies!”

との返事が返って来た。


ので、本当にそういうことなのだ。


自分の学生を持てば、時間も割かなくてはいけないし、自分がやればより短い時間で解けるであろう簡単めな問題を自分の学生のためにとっておいてあげたりもしなければいけないし、そういう手間はかかるけれども、でも成長を見ているのが楽しいわけで、だからそういう意味では、学生は本当に先生にとっては “kids” なのだろう。

一対一で色々と話した先生はせいぜい5人ぐらいだからまだ断言は出来ないけれど、でもここアメリカの大学院では、日本と違ってこういう考え方を持っている先生がとても多いように見える。


そしてそれは、本当に素晴らしいカルチャーだと思う。

もし将来、僕が本当に教授になったら、そういう風に思える人になりたいと思う。


・・・むー、真面目に随分と書いてしまった(笑)

ということで、今日はこの辺で!

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